小型スターラーの製作

研究室レベルの有機合成において欠かすことのできない装置の一つに、マグネチックスターラーというものがあります。この装置の多くは内部で永久磁石が回転することにより、外部の磁気撹拌子を回転させるという仕組みになっています。

【写真】 弊ラボのスターラーと私の化合物たち かわいいね

ただ、スターラーを一つ置くと結構場所を占有してしまい意外と邪魔で、小スケールの反応を回すだけの時などにはオーバースペックなのです。有機合成系の研究室ではクランプなどを固定するための金属パイプが格子状に組まれているため、このパイプにスターラーを固定できれば便利そうです。スターラーは頻用される装置のため、各理化学機器メーカーから様々なモデルが市販されているのですが、殆どが置き型のものしかありません。

無いならば 作ってしまえ スターラー

というわけで自作しちゃいました。

材料

  • アルミ製の筐体(タカチ製 W40×H30×D55)
  • ムッフ固定用のステンレスパイプ(Φ9.0)
  • モーター
  • モータードライバ
  • 2.1mm DCジャック
  • スイッチ(トグルスイッチがおすすめ)
  • パイロットランプ(その辺に落ちてるLEDとか)
  • 金属製の円板(Φ30~40)
  • 永久磁石(ダイソーに売ってるのとか)
  • ねじ各種
  • 導線と絶縁用熱収縮チューブ

筐体はこちらを使いました。タカチ電機工業製です。

【写真】 アルミ筐体 表面の質感が素晴らしい

モーターは金属製のギヤボックスとジョイントが付属したこちらを使いました。6Vで500rpmですがもう少し回転数高めでも大丈夫だと思います。市販品を使ったのは小型化のためです。組み立てをめんどくさがったわけではありません。

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モータードライバも市販のやつを使いました。決して回路設計がめんどくs

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それにしても密林は安いですね。私が購入した商品たちは問題なく使えました。商品説明の怪レい日本語がまた香ばしいですね。

【写真】 モータードライバとDCジャック

工具類

  • ドライバー各種
  • 電動ドリル・ボール盤(誤家庭にあるやつでOK)
  • ラジオペンチ
  • はんだこて
  • テーパーリーマー
  • センターポンチ(あると楽?)
  • 接着剤

組み立て

回路図と呼ぶのもおこがましい雑な図ですが、配線はこんな感じです。今回はパイロットランプに青色5㎜のLEDを使いました。導線は長すぎると小さい筐体に収める際に邪魔になるのでいい感じの長さにします。モーターとモータードライバ間の導線だけは組み立ての際に別部品となる関係上、長めにとりました。電源はDCアダプターを使用するため、電源部分の+極をDCジャックの内側に、ー極を外側に接続します。絶縁用に熱収縮チューブをあらかじめ導線に通し導線を仮止めしたら、一度電源に接続して正常に動作するか確認し、正常に動作することが確認出来たら半田付けを行います。モータードライバの入出力端子はターミナルブロックになっていますので、半田付けは必要ありません。

回路部分ができたら、金属加工をしていきます。支持用のステンレスパイプはボール盤で、それ以外のアルミ筐体部分は電動ドリルで、それぞれ穴あけ加工を行います。DCジャックやステンレスパイプを通すための大きめの穴は、5㎜程度の穴をあけた後、テーパーリーマーで穴を広げます。穴あけの作業が個人的には一番大変でした。グリニャール反応用のマグネシウム削り節みたいなキリコが飛び散ります。あと飽きてきて、途中ですぐウマ娘を開いちゃうせいで穴あけが全然終わりません…。電動ドリルよりトウカイテイオーのほうが可愛いのでしょうがないです。

それとボール盤等を使うときは軍手などはしてはいけません。巻き込まれて現場猫案件です。工作をするときはけがに注意してご安全に!ヨシ!

回転部分も制作します。適当な金属製円板の中央に3mmの穴をあけ、M3のねじとナットで固定します。その後二箇所に磁石を接着剤で接着します。この際、片方がN極が上、片方がS極が上となるようにしましょう。そうしないとスターラーではなくただ円板が回転する謎インテリアになってしまいます。

穴あけ加工が終わったら、先ほど組み立てた回路をねじ止めしていきます。基本的にはM3のねじでよいですが、前述の市販のモーターのギヤボックスにはM1.6用のねじ穴が開いているので活用しましょう。

【写真】 ねじ止めが終わった状態

ここまで来たらあと一息です。アルミ筐体をねじ止めして閉じるのですが、小型化を突き詰めたせいで、小池都知事もびっくりするほど密です状態なので、各部が干渉したりショートしてないかよく確認してください。ショートが心配な場合はグルーガンやビニテで絶縁してください。

無事閉じることができたら、回転部分を組み立てます。モーターのシャフトと金属円板のねじを継ぎ手でつなぎます。

【写真】 回転部分 3mmベアリングを嚙ませたら少し静かになったような

これでめでたく完成です。

完成

ムッフでスタンドに固定し、電源に接続してスイッチオン!

うおぉかっこよくないですか??(自画自賛)研究室の同期には「ヘリコプターの形をしたエフェクター」って言われました。確かにエフェクター感あります。

さっそく研究室で使ってみました。

やはり場所をとらなくていいですね。これから研究室で重宝しそうです。アズワンさんとか製品化してくれないかなぁ。

ちなみにUSB-DCプラグケーブルを使えばモバイルバッテリーから電源をとってくることもできます。近くにコンセントがなくても大丈夫ですし、外出先でふとスターラーを回したいときもノートパソコンから給電して使えるってわけです。便利ですね!

備忘録程度の内容になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!

いにゃゆう

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いにゃゆう

某大の有機合成系研究室に所属する院生です。個人的に趣味で行っている実験は無機化学系統のものが多いですが、物理や地学をはじめサイエンスに関連する分野には興味の尽きないサイエンス大好き人間です。
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