第1回えざおの毒コレクション【コノトキシン】

〈動物毒〉

みなさんこんにちは。
今回ご紹介する”猛毒”はイモガイの毒、コノトキシンです。イモガイは有毒生物の中でもかなりエゲツないので有名かと思います。

僕のコレクションからはイモガイの中でも特に毒性の強いやつらを載せます。
左からツボイモ、シロアンボイナ、タガヤサンミナシです。

イモガイは他生物に対して「歯舌」と呼ばれる毒針をぶち込み捕食します。このとき使われる毒が神経毒コノトキシンです。

歯舌は内部が空洞になっており、発射する際には中が毒でビタビタに満たされており容赦なく相手に撃ち込みます。返がついていて簡単には抜けないため獲物は暴れた末に死に至ります。また、イモガイは種類にもよりますが1個体につき成人30人分の致死量を持つといわれています。

イモガイは貝殻が多彩で美しく、ついつい手を伸ばした際に刺されて事故るケースや、潜水、潮干狩りなどで事故るケースもあるそう。人が刺される場合、蚊に刺されるほどの感覚らしく刺されても気がつかないというタチの悪さ。
その後毒が廻り、数十分で激痛、痺れ、腫れ、嘔吐、発熱が現れ、重症になると血圧低下、視力低下、全身麻痺、呼吸困難を起こして死に至ります。
刺されたとしても抗毒血清が存在しません。
症状のピークが5〜6時間ほどで12時間を過ぎれば後遺症もなく死ぬことはないみたいです。つまり、イモガイに刺されたときの救命措置は「耐えること」なのです。

軍手やウエットスーツも容易に貫通してくるらしいので海で見かけた際は近づかないようにしましょう。

話をイモガイの生態からコノトキシンへと移しましょう。コノトキシンはペプチド毒でカルシウムチャネルを特異的に阻害します。
イオンチャネルは細胞内へイオンを流入する開閉する孔のような構造をとり、膜電位を管理する重要な膜タンパク質で、様々な生理現象に関与します。
そのうちカルシウムチャネルは筋収縮に関与しており、コノトキシンはこれを阻害してしまうんです。明確な殺意を感じますね。

このコノトキシン(寒い)は実は医薬品として使えないか研究されていました。
先述のとおりコノトキシンはカルシウムチャネルを塞いでしまいます。そのうちN型カルシウムチャネルは神経伝達物質の放出に関与しており、これを阻害するのであれば鎮痛剤として使えないかと研究され、全合成(単純な有機分子から天然有機化合物を合成すること)によって2006年にエーザイが「プリアルト」という名前の鎮痛剤を販売しました。

生物毒が医薬品に応用される例は多々あります。コノトキシンもまた毒と薬が紙一重である良い例であるといえるでしょう。

それではまた次回の”猛毒”までさよなラジカル。

えざお

〈参考文献〉
大人のための図鑑・毒と薬 鈴木勉監修
公共法人 日本薬学会
Eisai News

〈画像引用〉
Wikipedia

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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