学校では教えてくれない「ダメ。ゼッタイ。」の理由〜麻薬及び向精神薬について〜

みなさんこんにちは。
今回は薬物乱用について話していきたいと思います。小中高の保健体育でこれでもかと言うほど「ダメ。ゼッタイ。」と教わった薬物。でも何故ダメなのでしょうか?法律でそう決められてるから、ではなんだか腑に落ちないですよね。どうして依存性が強いのか、身体に害があるのか、学校では教えてくれない”裏”事情を見ていきましょう。

〈覚醒剤〉
●メタンフェタミン

ダントツで検挙率が高く日本で最も乱用されている覚醒剤の代表格メタンフェタミン。「エス」「シャブ」などの隠語で呼ばれ、見た目は無色の結晶です。戦後間もなくして軍事用に備蓄していたメタンフェタミンの中枢興奮製剤であるヒロポンが市場に流通し、街中では「ポン中」と呼ばれる中毒者が現れ始めます。現在は水溶液にして腕から静脈注射するか、粉末を鼻からスニるか、ガラスパイプに入れて炙った蒸気を吸うなどの乱用法があります。

メタンフェタミンは報酬系神経回路に作用してドパミンやノルアドレナリン、アドレナリンなどのモノアミン系幸せ伝達物質をドッバドバ分泌させます。これら幸せ伝達物質はフェネチルアミン骨格を有することが多いです。

麻薬にもこのフェネチルアミン骨格を持つものが多く、これから紹介していくものの構造にも注目してみてください。さて、本来ならこの幸せ伝達物質にモノアミン酸化酵素がはたらいてアミンを分解し、不活性化させるところをメタンフェタミンは阻害剤として働きます。また、モノアミンを再度取り込むためのモノアミントランスポーターの向きさえも反転させます。これら3つの作用によってシナプス間のモノアミン濃度がめちゃくちゃ高くなり、幸せ伝達物質を分泌しては分解してを繰り返して保っていた幸福感の均衡を一気に崩れさせて幸せ大安売り状態を大脳で作り出し、中枢神経を著しく興奮状態へと持っていきます。

〈麻薬〉
●LSD

LSDは略称で正式名称はリゼルグ酸ジエチルアミド(独: LysergSäureDiethylamid)です。アルバート・ホフマン博士が麦角菌から医薬品を作る過程で発見したと云われています。LSDは通常水溶液の状態で流通し、ブロッターと呼ばれる紙に染み込ませます。紙の断片を口に含む(舌に乗せる)と粘膜から吸収されてトリップと呼ばれる幻覚体験が起こります。それはもうサイケデリック一色の歪んだ世界で五感がバグりの限りを尽くします。何故LSDがこのような幻覚作用を示すのかはよく分かっていません。身体依存性が殆ど無い上に死亡例も少ないため安全かと思いきやそうではなく、摂取時は脳がバグっているために理性が欠落し、危険行為に及ぶ可能性が否めない為現在は厳しく規制されています。かの有名なスティーブ・ジョブズが「LSDは人生において最も重要な体験の一つ」と発言したのは有名ですね。
●MDMA

MDMAは略称で正式名称は3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(3,4-MethyleneDioxyMethamphetAmine)です。構造自体は覚醒剤のメタンフェタミンと似ていますね。よくパーティドラッグとして流通しており隠語で「エクスタシー」と呼ばれ、セックスドラッグなどに乱用されることが多いです。麻薬というと小袋に入れられた白い粉末というイメージが強いですが、MDMAはまるでラムネ菓子のようなカラフルで可愛らしい見た目をしており薬物乱用への抵抗感を少し和らげてしまいます。摂取すると他の麻薬と同様に多幸感を示し、他者への共感、親近感が生じると言われています。これがパーティドラッグに使われる所以ですね。MDMAは報酬系神経回路に作用して幸せ伝達物質のセロトニンを過剰放出、セロトニントランスポーターの反転による再取り込みを阻害し、シナプス間のセロトニン濃度を爆上げします。その結果人生最高の幸せを手に入れます。ただしこの幸せはセロトニンの大インフレによってもたらされるため薬の効果が切れた頃には恐ろしいツケが回ってきます。そしてMDMAの恐ろしいところは純度にあります。闇市で流通するようなMDMAが衛生管理のなされた実験室で精製しながら作られているとは考えられません。不純物が残ったり他の薬剤を添加物に使ったりしている可能性が高くMDMA自体というよりその粗悪な製剤の不純物が身体に害を及ぼすのです。
●コカイン

コカインはコカの木から取れるアルカロイドで精神刺激薬の一つです。麻薬と聞いてまず最初に思い浮かべるのではないでしょうか。コカインの白い粉末をストローや紙幣の筒で吸い込む所作を映画やドラマで見たことがある人も多いと思います。他には水溶液にして注射したり、ガラスパイプに入れて炙って気化したものを吸引するという摂取法もあります。コカインは覚醒剤と同様に中枢神経に対して、モノアミントランスポーターに結合して再取り込みを阻害しシナプス間のモノアミン濃度を上昇させることで興奮作用を示します。精神依存性が極めて強く、一度でも手を出したら最後人間を辞めることになります。さて、コカコーラのコカはコカインに由来するという都市伝説がありますが、どうやら公式はそれを否定しているようです。
●ヘロイン

ヘロインはケシの実から取れる果汁を乾燥させたアヘンに含まれるモルヒネを無水酢酸でアセチル化することで得られる麻薬です。モルヒネは医療用麻薬として局所麻酔薬などに用いられますが、ヘロインは「脳みそを乗っ取る」と形容されるほど専門家から最凶最悪の麻薬だと評されています。摂取法にはスプーンに乗せたヘロインを炙って溶かし、腕に注射する方法や鼻から吸引する方法などがあります。乱用時の快感はマスターベーションの数万倍とも言われており、摂取後すぐにラッシュと呼ばれる幸福の波が来るそうで、人生最高レベルの快感とも言われています。モルヒネのOH基をアセチル化しているため脂溶性が向上し、血液脳関門をするりと突破後、酢酸とモルヒネに分解します。モルヒネはオピオイド受容体に作用することで神経系を抑制して効果を発揮します。

〈向精神薬〉
●フルニトラゼパム

フルニトラゼパムはジェネリック医薬品名で先発薬にはサイレースやロヒプノールという名前がついていました。先発薬は現在製造が中止され、後発薬のフルニトラゼパムが不眠症改善のための睡眠導入剤として現在用いられています。フルニトラゼパムは睡眠導入剤の中でもベンゾジアセピン系に属しており、その中でも最も強い効果を発揮すると言われています。作用時間もそこそこに長いためデートレイプドラッグとして最も多く乱用されています。そのため、製薬会社は飲料に混入させてもわかるように青色の色素を錠剤に組み込みました。水に溶かすと青色になるのです。

ゆえにデート中にバーなどに寄った際、ブルーキュラソーなど青いお酒を勧められたら警戒しなければなりません。アルコールとの同時摂取は高い確率で健忘を引き起こす上、効果が続いている間は何をされても起きないため、性被害に遭われた女性たちは寝てる間にレイプされたかどうかの記憶も無く、被害届が出せないというケースが多いようです。フルニトラゼパムはGABAA受容体のベンゾジアセピン結合部位に作用することで神経を催眠鎮静状態にして効果を発揮します。
●メチルフェニデート

メチルフェニデートはリタリンやコンサータという医薬品名でそれぞれナルコレプシー、ADHDの治療に用いられる向精神薬です。麻薬及び向精神薬取締法では向精神薬Ⅰ種に指定されており、アンフェタミンのそれと同様の扱いを受けています。主にドーパミンの遊離の促進とドーパミントランスポーターに作用してドーパミンの再取り込みを阻害することでシナプス間のドーパミン濃度を上昇させます。ノルアドレナリンやセロトニンに対してもドーパミン程ではないにしろ同様の作用を示します。
●トリアゾラム

トリアゾラムはフルニトラゼパム同様ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤で、先発薬はハルシオンという医薬品名でした。アップジョン社が開発したことから1980〜1990年代には六本木や歌舞伎町界隈で「アップジョン遊び」なるものが流行し、娯楽目的で高揚感を得るために乱用する若者が急増しました。作用機序はフルニトラゼパムと同様にGABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部に作用して過分極を引き起こして神経の催眠鎮静を示します。
●ぺモリン

ペモリンはベタナミンという医薬品名でナルコレプシーや軽症うつ病の治療に用いられる向精神薬でメチルフェニデートと同様の精神刺激作用を示します。ドーパミンの遊離促進とドーパミントランスポーターによるドーパミン再取り込み阻害でシナプス間濃度を上昇させます。類覚醒剤物質であるため、処方を勧める医師はそう多くないです。また、摂取による幸福感は殆ど無いため薬物乱用に用いられることも少ないです。

〈その他〉
●大麻(マリファナ)

マリファナは大麻草の葉を乾燥させたもので、紙巻きタバコのように包んで火をつけ、煙を吸引することで快感を得る娯楽目的に乱用されます。マリファナの主となる成分はテトラヒドロカンナビノール(THC)で、体内のアナンドアミドの代わりに中枢神経のカンナビノイド受容体に作用して快感をもたらします。薬物中でも規制が緩く、合法化している国も存在します。
●有機溶剤

いわゆるシンナーはトルエンや酢酸エチルなど、接着剤やペンキのうすめ液として使われる有機溶剤です。これを袋に入れて気化させたものを吸ったり吐いたりを繰り返すことで多幸感を得る「シンナー遊び」が1960年代から青少年の間で流行してしまい、これらは毒物及び劇物取締法により劇物に指定されてしまいました。完全にとばっちりです。シンナー遊びをしてしまった人たちには脳が萎縮し、骨や歯は脆くなり、筋肉が衰える中毒症状が表れました。

以上違法薬物たちはいずれも化学物質が直接脳みそをいじくり回して幸せのインフレを引き起こし、人生を味気ないものにした挙句本人を廃人へと導くという恐ろしいものばかりです。これらを規制せずに放置したらどうなるかはもうお分かりですね。理性を失った人々が街に現れ始め、社会全体が破滅の一途を辿るのです。
それでは次回の記事までさよなラジカル。

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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