[第4回おうちラボで実験してみた]悪用厳禁!トリカブトから猛毒アコニチンを抽出してみた。

〈座学〉天然物有機化学・分離化学

みなさんお久しぶりです。
今回はタイトルの通り毒草として名高く、殺人歴もあるトリカブトから毒成分である「アコニチン」を抽出していきたいと思います。

理系の人に植物毒といえば?と問うとまず「アルカロイド」という単語が飛び出してくるはずです。知らない人からするとアルカロイドとは一体何だ?と思いますよね。

●アルカロイドについて
アルカロイドについてはあまり決定的な定義はないのですが、一般的には「窒素を含む生理活性作用が顕著な塩基性天然有機化合物」とされています。
身近に存在する例で言うとトウガラシのカプサイシンやコショウのピペリン、コーヒーのカフェインなどがあります。

カプサイシン

カプサイシン

ピペリン

カフェイン

カプサイシンやピペリンは舌に辛味としての痛覚、カフェインは覚醒作用を与えますね。
これらは食用として少量摂取してもあまり人体に影響はありませんが、やはり植物のアルカロイドはほとんどが有毒です。
麻薬として有名なアヘンのモルヒネ、コカの葉のコカイン、依存性の高いタバコのニコチンなどを挙げればああそうかもなと思えるはずです。

モルヒネ

コカイン

ニコチン    

ただこの世には致死性がえげつなく高いアルカロイドも存在します。それが今回のトリカブトに含まれるアコニチンやマチンに含まれるストリキニーネなどです。どちらも殺人歴のある”ヤバい”やつらです。それぞれトリカブト保険金殺人事件と埼玉愛犬家連続殺人事件(凶器はストリキニーネの硝酸塩で犬の殺処分用)に使われました。

アコニチン

ストリキニーネ

さて、話を実験に戻しましょう。実はアルカロイドの抽出方法にはこれといった方法は確立されておらず、モノによるといえます。構造によっては特定の操作で壊れてしまったりするからです。
例えばコショウのピペリンはアルコール性水酸化カリウム溶液を用いるのがメジャーですが今回のアコニチンは構造中にエステル結合を持ち、加水分解されてしまうので強塩基が使えません。
では今回どのようなプロトコルで進めていくか、それはまず抽出という概念について考えなければなりません。抽出は目的物を不純物の少ない状態で分離することをいいます。そのため目的物の性質によって使い分けていきます。抽出法は主に大きく分けて3つ。
・固液抽出
・液液抽出
・酸塩基抽出
です。このへんは高校有機化学の芳香族化合物の分離でも習うような内容だったりします。

●抽出について
まずは固液抽出について。これは名前のままで固体から液体を使って成分を抽出します。身近な例では茶葉にお湯を注いで緑茶を作る操作、あれが固液抽出です。

お湯という溶媒を用いて茶葉という固体からエキスを抽出しています。

続いて液液抽出。これも名前のまま。液体から液体を使って成分を抽出します。このとき2つの液体が混じっては元も子もないですから片方は水、もう片方は低極性溶媒など水への溶解度が低い有機溶媒を用います。これによって2層に分離している溶媒で、有機溶媒に溶けやすいモノと水に溶けやすいモノに分けることができます。
この2つの溶媒のうちどちらかを取り出すには「分液漏斗」という専用の器具を使います。コックを開けることで下層だけ流し出します。

分液漏斗内で2層に分離した溶媒のうち、水を水層、有機溶媒を有機層と呼んだりします。通常水と油が分離するように下層が水層、上層が有機層になりますが、水より比重が大きいクロロホルムやジクロロメタンなどは下層に有機層が来るので注意しましょう。

最後に酸塩基抽出。これは酸、塩基の性質を考慮した液液抽出といってもいいでしょう。
有機化合物には酸性を示すもの、塩基性を示すものがあります。それらにそれぞれ塩基、酸を加えてやると中和反応により塩が生じます。塩はイオン性ですから有機溶媒より水へ溶けやすくなり、自ずと有機層から水層へと移動していきます。この抽出方法は有機溶媒に目的物以外の有機化合物が混在している場合に便利です。

改めて今回どのようなプロトコルでアルカロイド抽出を行うかというと
①ソックスレー抽出器とジクロロメタンでトリカブトの根から固液抽出
②抽出液に酒石酸水溶液を加えて酸塩基抽出
③水層を回収後炭酸ナトリウムを加えてアルカロイドを弱塩基遊離
④ジクロロメタンで液液抽出
⑤ロータリーエバポレーターで溶媒留去
です。

アルカロイドは先述の通り弱塩基性ですから酒石酸のような有機酸水溶液を用いて塩にして水層へ移す酸塩基抽出を行います。
このままでは目的物が塩のままですから炭酸ナトリウムなどアルカロイドよりも強い塩基性物質を加えて弱塩基遊離反応を起こさせてアルカロイドを析出させます。これをジクロロメタンなどの有機溶媒に溶かし込んで分液してあげればめでたく抽出が完了するわけです。

あまり文章で書いてもわからないと思うので実験パートでゆっくり見ていくことにしましょう。

今回の座学パートはここまで。
次回は実験パートです。
それではさよなラジカル。

えざお

〈実験編はこちら〉

【画像引用】
Wikipedia

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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