[第32回おうちラボで実験してみた]強制ゲロ薬!古の催吐剤・吐酒石を合成してみた。

〈実験〉無機合成化学

みなさんこんにちは。
今回はかつて催吐薬として用いられた吐酒石を合成したいと思います。吐酒石の正式名称は酒石酸アンチモニルカリウムで、名前の通りアンチモンの複塩です。

●吐酒石について
17世紀ごろに医薬品として用いられ、住血吸虫症などへの抗原虫物質としてアンチモン剤が効果があるとされてきましたが、副作用が強く嘔吐などが併発する問題もありました。この副作用を逆手にとって異物を飲み込んだ際に胃の内容物を吐き出させるための催吐薬として用いました。胃の末端神経に作用して嘔吐を誘発させます。インパクトの大きな吐酒石という名前はここから来ています。今現在では毒性が強いことから劇薬に指定され、ほとんど医薬品用途には使われていません。主な用途は農薬(殺虫剤)、媒染剤(染め物をする際に色素を定着させる薬品)などです。
吐酒石は酒石酸水素カリウムと三酸化アンチモンを水に溶かして複塩とすることで晶析します。合成自体は簡単なので早速やっていきましょう。

●実験
※注意
三酸化アンチモンは皮膚粘膜刺激性と強い毒性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

〜材料〜
・三酸化アンチモン
・酒石酸水素カリウム(食品添加物)

〜器具・装置〜
・丸底フラスコ
・適当容量ビーカー
・吸引ろ過器
・ジムロート冷却器
・マントルヒーター
・冷却水循環装置
・水流式アスピレーター

①酒石酸水素カリウム10gと三酸化アンチモン10gに水90mlを加えて攪拌する。


②30分間加熱還流を行う。

③反応液をろ過して未反応分を取り除く。

④ろ液を結晶ごとビーカーに移して加熱濃縮を行う。

⑤室温放冷して結晶を析出させる。結晶をろ取する。吐酒石が得られた。

めでたく吐酒石をゲットできました。嫌いな相手も吐瀉物まみれにする強制ゲロ薬ですが対人に使用するのはやめましょう。アンチモン中毒は洒落になりません。それでは次回の実験までさよなラジカル

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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