[第28回おうちラボで実験してみた]R-15指定!自分のDNAを抽出してみた。

〈実験〉生化学・天然物化学

みなさんこんにちは。
今回はDNAの抽出実験を行いたいと思います。よく生物実験として実習でも行われていますが多くの場合実験に使用される試料はブロッコリーやタマネギなどの野菜です。たしかに核も大きめでDNAの収量は非常に良いのですがあまり面白く無いので今回は人体からDNAを抽出します。とは言っても皮膚をミンチにする訳ではありません。グロいし。人体で簡単に手に入るDNAが豊富に含まれてるモノといえば、そう、○液!あまり大声ではいえませんが○液!です。「はぁ〜?きっしょ。」と思ったそこのあなたも元を辿ればそこから生まれてるんですよ。それをキモいと感じるのは自身の存在を否定するのと同値です。とは言ってもやってる事は気色悪いに違いないので正直記事にするか悩みました。が、面白そうなのと普通に管理人から「君が良ければいいのでは」と許可が出たので公開します。これは下ネタではなく立派な生化学実験です。なんのコンプライアンスにも引っかかっておりません。キモいけど。

●DNAについて
DNAについては高校の生物や化学で習います。五炭糖、リン酸、有機塩基の3つが脱水縮合したものからなるユニットをヌクレオチドと呼びDNAの構成単位とします。

このヌクレオチド同士がさらに縮合重合することで高分子のポリヌクレオチドすなわち核酸ができるわけです。このとき五炭糖にリボースを使ったものをRNA、デオキシリボースを使ったものをDNAと呼びます。

核酸を構成する有機塩基にはプリン骨格を有するアデニン(A)、グアニン(G)とピリミジン骨格を有するチミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)があります。ウラシルはチミンの代わりにRNAの中に存在しています。
〈プリン遠塩基〉

〈ピリミジン塩基〉

2本のポリヌクレオチド鎖が有機塩基同士の水素結合によって二本鎖になったときあの有名な二重螺旋構造となります。このときA-T、G-Cのように有機塩基は相補的関係を保ちます。

そしてこの有機塩基の配列こそが遺伝情報そのものとなるわけです。自身の身体の特徴を決定づける遺伝情報は「究極の個人情報」と呼ばれたりします。事実DNA解析によって個人を特定する方法が科学捜査で用いられていますからね。
さて、このご時世に是非話しておきたいのでDNAの複製についてに話を移します。DNAは有機塩基の水素結合によって2本の鎖が螺旋構造を取っていました。ここにポリメラーゼという酵素を加える事で1本の鎖に分断することができます。さらにヌクレオチドを加えると相補的関係を保ちながら1本の鎖が作られ、DNAが完成します。すなわちもとのDNAから1回の複製サイクルで2本のDNAが出来上がるわけです。このポリメラーゼ連鎖反応を利用したのがPCR法(Polymerase Chain Reaction)です。温度を管理しつつ複製したいDNA、ポリメラーゼ、ヌクレオチドを反応させる事でDNAがどんどん複製されていくわけです。今話題のPCR検査は粘膜から採取した試料に対してこれが行われています。

●精液・精子について
今回の試料となる精液の話をします。精子は非常に小さな生殖細胞で、DNAが入った頭部、ミトコンドリアで出来た中片部、泳ぐための鞭毛で構成されています。

精液は主に前立腺液、精嚢分泌液からなりその中に精子が分散しています。精嚢分泌液には果糖が含まれているため精子はこれをエネルギー源として泳いでいきます。また、前立腺液は液性を弱塩基性に保つのに一役買っています。ヒトの精子は精原細胞から減数分裂を経ておよそ2ヶ月半かけて精子へと分化し、副睾丸(精巣上体)に蓄えられ成熟します。精子の排出は女性の排卵と異なり自然に起こるものではなく外界からの性的興奮が必要となり、性交や性欲処理によって射精されます。

●DNAの抽出について
DNA抽出の方法にはセオリーがあります。よく行われている方法はDNA抽出液を作成後、試料を溶かしてエタノールを注ぐものです。DNAはエタノールに溶けにくいので析出してくるわけです。抽出液は塩化ナトリウムと食器用中性洗剤という意外と身近なもので出来ています。中性洗剤は界面活性剤なのでリン脂質で出来た細胞膜、核膜やタンパク質を破壊する役割を担っています。DNAはリン酸を構成ユニットに含むため水中では電離して負電荷を帯びた状態で存在します。そのため陽イオンであるナトリウムイオンでDNAを引っ張り出すのです。
それではさっそく実験していきましょう。

●実験
〜材料〜
・○液
・塩化ナトリウム
・中性洗剤
・エタノール
・お気に入りのやつ

〜器具・装置〜
・適当容量ビーカー
・駒込ピペット
・スピッツ管
・遠心分離機

①塩化ナトリウム10gを水100mlに溶かす。

②中性洗剤2.5mlを加えてDNA抽出液とする。

③自身の○液を頑張って採取する。すぐに虚無感、脱力感が現れ無我の境地に達し、やる気が失せてくるのでなんとか気合いで耐える。

④DNA抽出液75mlに○液を全量加えて攪拌する。

⑤予め冷凍庫で冷却しておいたエタノール150mlをビーカーの壁を伝わらせながら慎重に加える。

⑥しばらく放置して少しかき混ぜると白い綿状物質が生じる。これを駒込ピペットで吸い出してスピッツ管に回収する。

⑦DNA混濁液を遠近機にかけて遠心沈降を行う。


⑧最後に全てのDNAを集めて再度遠心沈降を行い、エタノールを懸濁後、再度遠心沈降を行う。○液からDNAが得られた。エタノールに漬けて保存する。

無事自分のDNAを抽出することに成功しました。実習などで行われる生化学実験ではよく野菜等からDNAを抽出することが多く、長い糸状として析出しますが、今回取り出した物は短い綿埃のような物ばかりでした。それでは次回の実験までさよなラジカル。

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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