[第10回おうちラボで実験してみた]ベートーベンの耳を狂わせた甘い毒を合成してみた。

〈実験〉無機化学

みなさんこんにちは。今日は酢酸鉛を合成してみたいと思います。タイトルがやけに気になりますね。ベートーベンとどんな関係があるのかさらっと説明したいと思います。

※以下諸説あります。
ベートーベンといえば18世紀の偉大な音楽家ですが、生涯の途中で耳が不自由になったエピソードは有名ですね。この耳が聞こえなくなった原因こそ鉛中毒だと言われています。ベートーベンの死後、毛髪を分析したところ通常ではあり得ないような量の鉛が検出されたからです。彼が鉛中毒になった原因は愛飲していたワインにあります。
ワインは発酵が進むとアルコールが酢酸に変化して酸っぱくなってしまい味が落ちてしまいます。そこでワインに鉛を入れて保存していました。鉛と酢酸が反応すると酢酸鉛が生成します。酢酸鉛は別名鉛糖と呼ばれるほど甘いのです。鉛の毒性を知らない当時の人たちは甘い甘い鉛入りワインをごくごく飲んでいました。そのうちの1人がベートーベンというわけです。実に恐ろしい話ですね。

さて、そんな耳を犠牲にしてまでベートーベンが愛した魅惑の甘い毒を作ってみましょう。酢酸鉛は手軽な鉛イオン源で、硫化物イオンの検出の試薬などに使えます。甘いからと言って間違っても口に含んではいけません。れっきとした重金属毒です。

※注意
氷酢酸、過酸化水素水は皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。酢酸鉛は劇物であり重金属塩です。扱うには徹底した廃液処理等の環境が必要です。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な症状につながる可能性があります。安易な真似は控えてください。

〜材料〜
・0.5mm径鉛玉(東急ハンズで購入)
・氷酢酸
・30%過酸化水素水
・純水

〜器具・装置〜
・ビーカー
・二口フラスコ
・ジムロート冷却器
・側管付き滴下漏斗
・メスシリンダー
・駒込ピペット
・吸引ろ過瓶
・ブフナー漏斗
・水流式アスピレーター
・マントルヒーター
・ホットマグネチックスターラー
・冷却水循環装置
・ドラフトチャンバー(局所排気設備)

①鉛50gに氷酢酸30g加えて反応装置を組み立てる。

②20%過酸化水素水40mlをゆっくり滴下する。滴下スピードが早すぎると反応が暴走する。

③ある程度鉛が溶けるまで60分加熱還流する。

④吸引ろ過で未反応分の鉛を取り除く。

④内容液をビーカーに取り出して加熱乾固する。

⑤粗生成物を回収する。

⑥粗生成物を純水に加熱溶解させたのち、自然放冷して再結晶させる。酢酸鉛が得られた。

酢酸鉛は今後分析試薬として用いたいと思います。鉛廃液は環境負荷が大きいのでそもそも真似しないと思いますが決して下水に流さないようにしてください。

それでは次回の実験まで
さよなラジカル。

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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