[第31回おうちラボで実験してみた]キムワイプからプラスチックを作ってみた。

〈実験〉高分子化学・材料化学

みなさんこんにちは。
今回はキムワイプ実験第二弾としましてキムワイプからプラスチックを作りたいと思います。前回はキムワイプを酵素分解して糖化し、美味しくいただこうという実験でした。無事成功し蜜状の甘い物質が得られ、公開してからTwitterでも大きな反響がありました。この実験自体はキムワイプの主成分セルロースが多糖類であることを利用しています。そして今回もセルロースの性質を活かした実験となっています。

●セルロースの加工について
プラスチックといってもポリエチレンやポリプロピレンなどの石油系合成樹脂ではありません。天然原料のセルロースを化学処理した、いわば半合成樹脂です。セルロースは化学的に非常に安定でほとんどの溶媒に溶けにくいため、そのままでは加工しにくいです。その理由はセルロース分子に存在するヒドロキシ基が分子間で水素結合を形成するためです。このヒドロキシ基を化学装飾することで水素結合を断ち切り加工性をアップさせ、樹脂や繊維などの製造が可能となるわけです。このようなセルロース誘導体にはアセチルセルロースやニトロセルロースなどがあります。それぞれについて説明します。まず、アセチルセルロースはヒドロキシ基を無水酢酸でアセチル化したものです。

アセチルセルロースを適切な溶媒に溶かして紡績したものをアセテート繊維と呼び、衣類やカーテン、タバコのフィルターなどに利用されています。その他にも写真フィルムや液晶パネルの偏光板に使われています。また、分解すると酢酸とセルロースになることから近年では環境に優しい生分解性プラスチックとして注目されています。
一方ニトロセルロースはヒドロキシ基を混酸(濃硝酸と濃硫酸の混合物)で硝酸エステル化したものです。

ニトロセルロースは綿火薬と呼ばれるくらい非常に燃えやすく発火すると灰すら残さず一瞬で燃え去ります。このことを利用したのが手品グッズのフラッシュコットンです。一瞬でボッと小爆発のように燃える姿は大きなインパクトがありますからね。

ニトロセルロースを樟脳と混合して作られる樹脂がセルロイドです。かつてはピンポン球に使われていましたが、今現在は眼鏡のフレームなど限られた用途で利用されます。また適切な溶媒に溶かしたものはコロジオンと呼ばれ傷口を保護する水絆創膏などにも使用されます。

●キムワイプからプラスチックを作る
今回作るものはアセチルセルロースです。作り方は至って簡単、セルロースを硫酸触媒下で無水酢酸と酢酸の混合物と煮るだけです。キムワイプは高品位のセルロースから出来ていることが以前の糖化実験で判明しているので特別加工する必要もなく行えます。この実験が成功したならばその際には「キムワイプラスチック」と名付けたいと思います。それでは早速やっていきましょう。

●実験
※注意
無水酢酸、酢酸、濃硫酸は皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。ジクロロメタン、メタノールは麻酔性と強い毒性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

〜材料〜
・キムワイプ
・無水酢酸
・酢酸
・濃硫酸
・ジクロロメタン
・メタノール

〜器具・装置〜
・500ml三口フラスコ
・適当容量ビーカー
・メスシリンダー
・ジムロート冷却器
・吸引ろ過器(ガラスフィルター)
・ウォーターバス
・マグネチックスターラー
・蒸発皿

①キムワイプ12gを細かく刻む。

②酢酸60mlと濃硫酸0.6gを加えてかき混ぜ、1時間放置する。

③無水酢酸60mlと酢酸24mlを加えて50℃でキムワイプが完全に溶けるまで加熱する。


④続いて80%酢酸30mlを加えて60℃で15分加熱する。この操作で未反応の無水酢酸を加水分解しておく。

⑤反応液をビーカーに移し、水60mlを攪拌しながらゆっくり加えたのち水240mlを追加する。


⑥吸引ろ過で沈殿を回収し4〜5回水洗浄する。

⑦鍋と皿で作った即席の水蒸気浴で乾燥させる。キムワイプ由来のアセチルセルロースが得られた。

⑧キムワイプ由来アセチルセルロースにジクロロメタン-メタノール(9:1)混合液を加えて攪拌する。溶けにくい場合は適宜追加して溶かす。粘稠な液体が得られる。お好みで着色する。

⑨液体を型に流し込み25℃で緩やかにジクロロメタンを飛ばして乾燥させる。キムワイプ由来のプラスチックが得られた。

今回めでたくキムワイプのプラスチック化、「キムワイプラスチック」の作成に成功しました。ただ強度に難ありでかなり脆いです。前回の糖化といい今回のプラスチック化といいキムワイプを化学的にいじって本来の使用法から逸脱していることに対してそろそろ日本製紙クレシアさんから怒られるんじゃないかとビクビクしております。キムワイプが好きすぎて偏愛するあまり分子構造を変化させて他のものに生まれ変わらせたかっただけなんです。決してキムワイプへの冒涜ではありません。何卒ご容赦ください。それでは次回の実験までさよなラジカル。

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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