ケイ素生物は存在しないのか

地球上の生物は炭素を基盤とした物質で構成されている。骨はリン酸カルシウムだし、炭酸カルシウムの殻を持つ者もいるが、それ自体は生物学的な活性を持つわけではない。成長して、生殖活動を行い、自己を複製するといった生命活動をするためには炭素が不可欠だ。多種多様な生物あれど、どいつもこいつもみんな炭素で出来ている。様々な種類の元素があるにもかかわらず、みんな炭素である。なんで炭素なのか。他の元素ではダメなのか。炭素は何が特別なのか。周期表を見ると縦の列には似た性質の元素が並んでいる。炭素の上には何もないが、下にはケイ素がある。実際、ケイ素は結構炭素と性質が似ている。ではケイ素ではダメなのか。ケイ素を基盤とする生命は存在し得ないのだろうか。

炭素を含む化合物を有機物という(例外もあるがここでは踏み込まない)。有機物以外は無機物だ。炭素を含むかどうかだけで物質が二種類に分けられている。これほど特別扱いされている元素は異常だと言わざるを得ない。なぜこんなにも特別扱いされているのか。その理由は、炭素だけが複雑な化合物を作る能力を秘めているからに他ならない。生命活動という複雑な現象が起こるためには複雑な分子が必要だ。複雑な分子高分子を構成するためにはこの特別な元素が無くてはならない。

まず、炭素は4本の結合を持つことができる。水素は1本、酸素は2本、窒素は3本なのに対して、炭素は4本だ。これだけでまず炭素が複雑な化合物を作るのに有利であることが分かる。しかし炭素と似た性質を持つケイ素もやはり4本の結合を持つことができる。さらに言うとリンは5本、硫黄は6本の結合を持つことができるので、結合本数だけで炭素が特別だと言うことはできない。

では何が特別なのかと言うと、炭素は炭素同士で強力な結合を作ることができる。炭素同士で繋がって無限に長い鎖を作ることができるし、環状になったりもできる。これがかなり珍しい性質である。他の元素だと、たくさん繋がって長い結合を作ると不安定になってちぎれてしまう。だが炭素は簡単にはちぎれない。ここがすごいところだ。さらに言うと炭素は炭素同士で単結合だけでなく二重結合や三重結合といった結合を作ることもでき、実にバラエティに富んだ物質を作る。実はケイ素もケイ素同士で繋がることができるが、単結合だけであり、二重結合になると不安定になってちぎれてしまう。同じ元素同士で様々な結合を作り、無限に繋がることができる元素は炭素しかない。だから炭素は特別なのだ。単結合しかできないケイ素で複雑な生物を構成するのは無理だろう。

じゃあ簡単な構造の生物ならなんとかならないのか。実はそれも難しい。簡単な構造の生物は一体どこから自分の体を作るのに不可欠な炭素を得ているかというと、二酸化炭素だ。二酸化炭素は空気中にもあるし、水に溶けることもできる。それを利用して自分の体を作る。ではケイ素はどうかと言うと、ケイ素は基本的に二酸化ケイ素として存在している。これは固体なので空気中に拡散しないし、水にも溶けない。そんな物質を簡単な構造の生物が摂取するのは困難だ。いくらケイ素がそこら辺に豊富にあったって、自分の体に取り込めないのでは使えない。水に溶けないのでは血液を使って循環させることもできない。そう考えるとケイ素生物は非現実的であることが分かる。炭素に一番似ているケイ素ですらダメならば、もう炭素しかない。100%ありえないと言い切ることはできないが、ケイ素生物というSFチックな存在は残念ながらおそらく存在しないのだろう。

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おーたむ

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みくあす管理人プロフィール
映える化学実験を求めてMyラボで遊んでる人。毒劇物取扱者及び危険物取扱者(甲種)の資格所持者。

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