[第3回おうちラボで実験してみた]リアルDr.STONE!?イチから石鹸を作ってみよう!

〈座学〉天然物有機化学

みなさん今期めちゃくちゃアツいアニメはなんだと思いますか?
そう!Dr.STONE!
突如地球が緑色の光線に包まれて世界中の人類が石化、3000年の時を経て石化から解けた天才科学少年・石神千空と愉快な仲間たちが科学の力を使って文明をイチから作り上げていくという胸アツエモエモなアニメです。そしてこの作品の2話に出てくるモノを実際に作っていきましょう。

「病気=ゲームオーバーのこの世界じゃ、バイキン浄化するこの小せぇ塊が医者代わりの命の石、Dr.STONEだ。」by石神千空

というわけで今回は石鹸作りです。
石鹸って何で出来てるか存知でしょうか。
実は油脂とアルカリから出来ているのです。

石鹸の製造についてを説明します。

油脂は高級脂肪酸(この高級は値段ではなく炭素数が大きいという意味)3分子とグリセリンとの3価エステルです。  エステル結合を持つということは加水分解が可能ですよね。加水分解を行えば元の高級脂肪酸とグリセリンに戻るはずです。
しかし、ここで加水分解に使うのは水酸化ナトリウムなどのアルカリです。アルカリを使う加水分解を「鹸化」と言いました(第1回座学参照)。
鹸化を行うとグリセリンはできますが元の高級脂肪酸には戻らずナトリウム塩の形で生成します。これが所謂「石鹸」なのです。
水酸化カリウムなどを使って鹸化させると液状のカリ石鹸ができます。固形石鹸を作りたい場合はナトリウム塩を使いましょう。さて、ここで作品を振り返ってみましょう。千空は昆布から取れる炭酸ナトリウムと油を反応させて作る、と言っていました。海水はかなりの塩分を含んでいるので必然的に海底の土壌はナトリウムが豊富になります。そこで育つ昆布などの海藻は炭酸ナトリウムを多く含みます。昆布を焼いて灰にすれば容易に炭酸ナトリウムを抽出できるわけです。先程石鹸を作るには水酸化ナトリウムなどのアルカリが必要であると述べましたがこの炭酸ナトリウムは以下のように電離し、炭酸イオンが加水分解を起こして水酸化物イオンが生成します。
炭酸ナトリウムは割と強い塩基性です。しかし油脂を鹸化させるには少しパワーが足りません。石鹸を作るにはどうしても水酸化ナトリウムが必要なわけです。なのでこの炭酸ナトリウムをもとに作ります。水酸化ナトリウムを作るには「複分解反応」を使います。炭酸ナトリウムと水酸化カルシウムを加熱しながら混ぜることによって水酸化ナトリウムが生成、炭酸カルシウムが沈殿します。

水酸化カルシウムは貝殻を高温で熱し、生成した酸化カルシウムに水を加えればできます。作中では昆布から抽出した炭酸ナトリウムのみを油脂と反応させていましたが現実ではかなり厳しいでしょう。

続いては石鹸について説明します。

普段何気なく使っている石鹸ですがどのような原理で汚れが落ちているかご存知でない方も多いかと思います。まず先程石鹸は高級脂肪酸のナトリウム塩と言いました。高級脂肪酸とは簡単に言うと長い炭素の鎖を持ったカルボン酸のことです。例えばステアリン酸。炭素数が18とかなり大きいです。

また、リノール酸も炭素数18

パルミチン酸は炭素数14

ラウリル酸は炭素数12

とそれぞれ長鎖であることがわかります。
そしてそれぞれがナトリウム塩となると長鎖アルキル基部分の疎水部とナトリウムイオンとのイオン結合の親水部に分かれます。そしてこの石鹸分子に脂溶性の油汚れなどが水中で触れると疎水部が油汚れのある内側を、親水部が外側(水側)を向いて油粒子を取り囲みます。これを「ミセル」と言います。ミセルは油を取り囲んだまま水中に分散します。これによって油汚れが落ちるのです。このことを「乳化作用」と言います。乳化はすごく身近な現象です。石鹸や洗剤の他にもマヨネーズや木工用ボンド、絵の具などがありますね。
以上の原理によって石鹸や洗剤は汚れを落としてくれるのです。汚れを落とすと言うことは必然的に菌などを除去することもできるのです。

古代、家畜の脂肪と灰汁が混ざって泡立っているのを発見してから人類は石鹸の有用性に気づきました。数千年もの間我々人類を病気から守り続けた石鹸こそ偉大であり医者代わりの命の石とも言えるのです。唆るぜ、これは!

それでは次の実験編まで
さよなラジカル。

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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