[第23回おうちラボで実験してみた]催眠鎮静剤クロレトンを合成してみた。

〈実験〉有機合成化学・医薬品化学

みなさんこんにちは。
今回は催眠鎮静剤、麻酔剤として利用されていたクロレトンを合成していきたいと思います。クロレトンの正式名称は1,1,1-トリクロロ-2-メチル-2-プロパノールで構造式は以下です。

●クロレトンについて
クロレトンは脂溶性が強く、細胞膜リン脂質を破壊できるので抗菌作用を持っています。他に抗菌作用を持つものに塩化ベンザルコニウム(オスバン,逆性石鹸)がありますが、これは脂質に対しての乳化作用によるもので、クロレトンはこれに劣りますが塩化ベンザルコニウムよりも細胞に対する毒性が低いという利点があります。このため化粧品の防腐剤などに用いられます。また、局所麻酔作用や催眠作用があるため医薬品の添加物として用いられます。これは初の合成麻酔剤である抱水クロラールやトリクロホスと同様の作用機序により鎮静剤作用を示すものと考えられます。

●合成について
反応機構は以下の通りです。

水酸化カリウム由来の水酸化物イオンはクロロホルムの水素を引き抜き、求核種であるカルボアニオンを生成させます。これがアセトンのカルボニル炭素に求核攻撃を行い、最後水から水素を貰ってOH基を形成し反応が終わります。一連の反応で水酸化物イオンは触媒としてはたらいていることがわかります。

●実験
※注意
アセトンは麻酔性と引火性を有します。クロロホルムは強い毒性と麻酔性を有します。水酸化カリウムは皮膚粘膜腐食性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

〜材料〜
・アセトン
・クロロホルム
・水酸化カリウム
・エタノール

〜器具・装置〜
・250ml二口フラスコ
・適当容量ビーカー
・駒込ピペット
・氷浴
・単蒸留装置
・ホットマグネチックスターラー
・冷却水循環装置

①アセトン100mlを氷浴で冷却する。

②クロロホルム12mlを加えて冷却を続ける。

③水酸化カリウム2.0gを少しずつ加えていき、60分撹拌する。このとき温度は8℃前後を維持する。

④白濁した反応液を吸引ろ過し、粗クロロブタノールを得る。

⑤濾液を20mlになるまで蒸留装置で加熱濃縮したのち氷水に入れて粗クロロブタノールを回収する。

⑥④と⑤で回収した粗クロロブタノールを少量の熱エタノールに溶かす。加熱し続けながら過剰の熱水を加え、白濁したところでエタノールを液が透明になるまで少しずつ加える。

⑦氷浴で冷却して結晶を析出させる。

⑧ろ過で結晶を回収する。精製クロロブタノールが得られた。収率は46.13%であった。回収後は褐色遮光瓶で保管する。

めでたく催眠鎮静剤クロレトンを合成することができました。匂いは樟脳のような独特の匂いを放っています。医薬品に使われるような物質でも実験合成品を人体に使用するのは御法度なので本当に催眠作用や局所麻酔作用があるのか不明ですが、いつか抗菌作用テストはしてみようと思います。それでは次回の実験までさよなラジカル。

えざお

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えざお

えざお

記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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