[第46回おうちラボで実験してみた]ラリれる風邪薬から合法幻覚薬物DXMを抽出してみた。

〈実験〉医薬品化学・有機化学・分離化学

みなさんこんにちは。
今回は風邪薬からDXMという成分を抽出していきたいと思います。このDXM、正式名称をデキストロメトルファンと言い、用量用法を守った適切な服用では鎮咳効果があるのですが、それをオーバーする服用(オーバードーズ)すると幻覚やトリップ体験ができることで有名です。トリップできるのに麻薬にも指定されてない謂わば合法幻覚剤なのです。しかし、精神への効果が強いためインドネシアでは単剤の製造、販売が違法となっています。

●DXMについて
オピオイド(モルヒネなど)の大元の骨格にもなるモルフィナン骨格を有するモルフィナン系薬物です。モルフィナン骨格を有することから延髄の咳中枢を鎮静することで鎮咳効果を持ちます。DXMは咳中枢作用以外にも中枢神経伝達に対しても作用します。それは多岐に渡り、NMDA受容体阻害、セロトニン再取り込み阻害、オピオイド受容体作動などがあります。
DXMは通常量を大きく超えて服用すると幻覚が現れます。閉眼幻覚と言って目を閉じるとまぶたの裏にサイケデリックで幾何学的な模様が現れたり、世界が歪んで立つのも難しくなってフラついたり、音楽を聴くと自分と音楽が融合した感覚になったり、時には自我を失って肉体と自意識が乖離したりなど。いわゆる「宇宙へのぶっ飛び」が体験できるわけです。量によっては幻覚作用がLSDのそれに匹敵するという人もいます。 DXMは市販薬に含まれていますからよくOD(オーバードーズ:過剰服用)して幻覚遊びをする人がいます。たまにバッドトリップする人もいるそうですが。使われる市販薬としては「メジコンせき止めPro」や「コンタックせき止めW」があります。余談ですが、市販薬のODで有名なのが風邪薬のエスエスブロン錠。これにはdl-メチルエフェドリン(覚醒剤のようなもの)とジヒドロコデイン(オピオイド系麻薬)が含まれているのでODすると「キマる」そうです。ジヒドロコデインは麻薬性鎮咳薬なので習慣性(依存性)がありますが、DXMは非麻薬性です。

●実験プロトコル
国内でのDXMの純粋剤(余計な複合成分が含まれていない)はメジコンです。DXM臭化水素酸塩水和物15mg錠となっています。この錠剤にはDXM臭化水素酸塩水和物以外に添加剤として乳糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、セラック、ヒマシ油が入っています。そしてDXM臭化水素酸塩水和物はメタノールに極めて溶けやすいという情報があります。これらを考慮すると抽出には以下の実験プロトコルが考えられます。
①錠剤をメタノールで抽出。乳糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムは溶けないので不溶分としてろ過で除去する。
②メタノール中にはDXM臭化水素酸塩とセラックとヒマシ油が混在している。メタノールを留去して混合物を得る。
③混合物をヘキサンで洗浄してヒマシ油を除く。
④混合物に水酸化ナトリウム水溶液を加える。このとき弱塩基遊離によりDXM臭化水素酸塩がDXMになり沈殿する。
⑤沈殿をろ過で回収する。DXMとセラックの混合物を得る。
⑥混合物をジクロロメタンに溶かした後ろ過でセラックを除く。
⑦ろ液のジクロロメタン溶液を溶媒留去してDXMを得る。
これらを実際にやってみましょう。

●実験
①メジコン錠600錠を乳鉢で粉砕する。



②粉末になったメジコンにメタノール150mLを加えて30分間撹拌する。

③吸引ろ過で不溶分を取り除く。不溶分を回収してメタノール抽出をもう一度行う。

④ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮する。ここでDXM臭化水素酸塩とセラックとヒマシ油の混合物が得られる。混合物をヘキサンで洗浄する。

⑤混合物に4%水酸化ナトリウム水溶液150mLを加えて30分間撹拌する。

⑥沈殿をろ過で回収し、ジクロロメタン150mLに溶解する。

⑦ジクロロメタン溶液をろ過して不溶分を除く。

⑧ジクロロメタン溶液に硫酸ナトリウムを加えて水分を除去する。

⑨ジクロロメタン溶液をろ過して硫酸ナトリウムを除き、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮する。

⑩残渣を回収する。DXMが得られた。遮光瓶に保管する。

めでたくラリれる風邪薬から幻覚成分DXMの抽出に成功しました。DXMは非麻薬ですから市販薬からの抽出は使用、譲渡しない限りは麻取法、薬機法的には大丈夫なはずです。
ちなみに同じく風邪薬に含まれるdl-メチルエフェドリンを抽出すると10%を超えるものは覚醒剤原料となるため覚取法の対象に、ジヒドロコデインまたはコデインを抽出すると麻薬製造になって麻取法の対象になりかねないので注意しましょう。
それでは次回の実験までさよなラジカル。

えざお

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えざお

みくあす令和ラボ所長プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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